消費税増税がスタートした初日、まず向かったのは、昭和の面影を残す葛飾区の「立石仲見世商店街」だ。
「消費税って、ずるい税金ですよね」
こう言うのは、戦後の闇市時代からこの地で店を構える老舗「奥戸せんべい」の女性店主。
■「景気回復の実感?どこにもありません」
全盛期は魚屋や八百屋、洋品店、靴屋、喫茶店、飲み屋など60軒以上が軒を連ねていた商店街の古株だ。
「安倍さんは〈増税した分は社会保障費に充てる〉なんて言っていますが、実際の年金額は減っています。ご覧の通り、商店街の人通りはまばら。増税の根拠にした景気回復の実感はどこにもありません。消費税が上がった分を1枚50円のせんべい代に上乗せできればいいけど、これ以上売れなくなるのは困る。値上げは様子見です」
一方、大体1品10円ずつ値上げしたという「玉起屋」は、毎朝8時から煮物や揚げ物、煮魚など全30品目を仕込む人気の総菜屋。ご主人・加藤正徳さんが言う。
「ベアがあるような大企業のホワイトカラーの人たちはいいよ。でも、ウチみたいなところには、そういう人は来ないからねぇ。新しくできたスーパーに客を奪われて厳しいのに、ここ1年くらい食材や油、調味料などの仕入れ値段が上がっている。この厳しいところに増税だろ。ドサクサ紛れで、ガソリン代に含まれる環境税も上がるじゃねぇか。ダブルパンチなんてもんじゃない」
魚屋「まぐろや」のご主人、寺島孝さんも、仕入れ価格高騰に加えての増税を怒る。
「魚介類によって違うけど、価格の高騰が著しい甘エビは、仕入れ価格が2倍ですよ。だからといって値段を2倍にするわけにはいかない。ウチは1盛り360円均一(増税で10円値上げ)の刺し身が売りだし、品ぞろえの必要性から種類を絞るわけにもいかない。市場で原価が少しでも安い新鮮な魚を見つけて仕入れ、何とかしのいでいるのが実情ですよ」
■「税金を上げる前に、政治家や役人の給料を削るのが筋」
餃子が名物の「サクライの餃子屋さん」も、増税を機に全品10円の値上げに踏み切った。店主の桜井勝徳さんが言う。
「増税前に買いだめしたものは、ティッシュや洗剤などの日用品だけでなく、冷凍食品もある。お客さんの家にある冷凍食品のストックがなくなるまでは、うちの餃子も売れないでしょう。売り上げは25年前のおよそ半分。5月はさらに減るでしょうから、厳しいですよ」
そんな商店街の怒りを集約していたのが、八百屋「台新青果」の鈴木清さん。
日本という国を会社に例えたら、会社の経営で一番重いのは人件費。街の八百屋も魚屋も大企業もどこも同じで、経営が厳しくなれば、人件費を削ります。それくらいのこと、頭が悪いオレだって分かる。だから、日本という国を動かしている政治家や役人は自分たちの給料を減らせばいいんですよ。そうした上で〈でも、税金を上げないと、国が回らない〉というのであれば、我々も納得する。自分たちはふんぞり返って、税金だけ上げるのは許せない」
毎日、肌で景気を感じている下町の商店主たちには少なくとも、何の恩恵もないようだ。「アベノミクス? どこの国の話?」 ― 一様に、そんな表情だったのである。
http://gendai.net/articles/view/life/149258/3
結局消費税というのはおとなしくて大々的に抗議をしない日本人をさらに困窮させる、中低所得者にターゲットを絞った「社会的いじめ」の最たるものだ。
増税の前に、官僚や政治家という言いだしっぺの給料を半減から20%まで削減して自ら身を切り、現在のところ税収を減らす最悪の制度欠陥である「輸出消費税還付」を全廃するか、最低でもトヨタなど輸出大企業が総取りしているゆがんだ制度を改めて、インボイス導入によって国内流通各段階の中小企業にもそれを分配して社会的利益浸透が図れるように制度改正すべきだ。
それらを国内最大の公務員労組や大企業の抵抗によって実現できぬうちは、より弱い立場の人々を狙い撃ちした規制緩和や増税などを行なうべきではない。
公務員給与を下げないことや「輸出消費税還付」という欠陥制度を改めないことこそが打ち破るべき岩盤規制なのだ。
これらを実現できぬ限り改革など標榜する資格はない。
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